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畑が教えてくれたこと ニュースレター10月号より

畑がおしえてくれたこと2

< 仕事のつながり >

7月の終わりから8月、そして9月のはじめにかけておぐらやま農場ではほぼ毎日のように、トマトの収穫作業が続きます。この時期に滞在してくれているウーファーさんはおそらく一生かけても食べきれないほどのトマトを収穫しているんじゃないでしょうか。

私達のトマト畑は家庭菜園などで支柱を使って仕立てるやり方と違い、蔓(つる)を地面に伸ばして、わき芽も一切摘みとらずトマトが葉を茂らせる勢いのままに伸びてもらい、花と実をつけられるだけつけ、トマトの実が真っ赤に熟した順に摘みとっていく自由放任栽培とも言える作り方をします。

これは加工用トマトと言われるトマトの中でもジュースやケチャップ、また各種ソースなどの原料に使われることの多い、甘味よりも酸味が美味しいトマトの栽培方法としては一般的なのですが農場の畑見学をされる人に聞いてみると、「こんな作り方は初めて見ました」という方が大半なのです。

おぐらやま農場で収穫したトマトは私達の農場で販売するトマトジュース・ケチャップの原料となるほか、「高橋ソース」さんという埼玉県にある食品会社で製造される「カントリーハーベスト」というブランド名のソース(中濃・ウスターなど)の原料として使われます。「安曇野トマトの会」という有機農家の仲間約10名で生産者グループを作り、高橋ソースさんの必要とする年間数十トンに応えるべくやっております。

先日その高橋ソースさんから、製造現場で実際に加工業務に関わっている方たちの「社員研修」ということで10数名の方が社長さんも含め来られて、おぐらやま農場でトマト収穫の体験作業をしていただく機会がありました。

取り方の説明をして1時間ほど、コンテナをのせた一輪車を押しながら収穫作業をしてもらったのですが、畑の土の柔らかいことに皆さん驚かれていました。また、農薬を使わないで加工トマト栽培を成り立たせていくために、肥料をやらないでも土に養分が豊かにある炭素循環の畑を見てもらうことができました。

「カントリーハーベスト」というブランドはオーガニック原料にこだわりを持って、高橋ソースさんの会社理念を体現した製品だと聞いてます。私自身、その仕事に関わる誇りとかやりがいという、トマトを栽培する立場として大切な部分を確認する機会になったと思いますし、会社の方にもそのような研修になってくれたらとても嬉しいです。
自分が仕事にしている内容のつながり(その前もその後も)を知ることは、とても大切なこと。ソース会社の方が農場の様子を見学に来てくれたように、私達が今度は工場見学をさせてもらって自分たちの仕事がどんな現場でどんな人たちへつながっていくのかを勉強したいと思っています。
そして、私たちの農場からお届けするトマトジュースたちが、皆さんの家庭でどんなふうに使われているかも、ぜひ教えてくださいね。


今年はおぐらやま農場のウーファーさんと、たくさんトマトを取りましたが、実は他にもお手伝いいただいた人たちが大勢おります。収穫ピークに私たちの手数だけでは間に合わなくなった時、すぐ近くでウーフホストをしている津村さんに相談の電話を入れたらウーファーさん4人を引き連れてトマト畑へ参上。困った時に駆けつけてくれる頼もしさが、かっこいいです。もちろん津村農園から要請があれば、可能な限り私達も出向かせていただきます。 カブにまたがるのはバイクで日本一周の旅の途中でおぐらやまに立寄って、1週間ウーフをしてくれたイマダ君。トマト収穫をしていたみんなに盛大に見送られて出発。旅が終わったら岡山の実家の米農家で後継ぎになるんだと言っておりました。

同じときに、穂高在住のタナベさん、堀金在住のマツモトさんも、メール連絡したら快くやってきてくれました。本当にありがとうございます。地元在住の方に「縁農サポーター」として、気軽に声をかけられる間柄になっていく人がだんだん増えてきました。これも本当に頼もしいし、ありがたい事です。

穂高でパーマカルチャーや自然農など実践しながら宿をしているシャロムヒュッテさんからも、若手スタッフ4人がトマトを取りに来てくれました。これは、フェイスブック上で「お金いらず安曇野」というサイトが出来たのですが、そこにテルミさんが、夏場は農場の仕事がいっぱいあるし、お手伝いしてくれた人には、キズなどの訳あり農産物で御礼しますと書き込んだら、それに応える形でさっそく来てくれたのです。SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)ってすごいですね。

こうなってくるとトマトの収穫作業ではあるのですが、この本質は人の交流、心の交流といいますか、沢山の人に出会い、場に出会う機会です。人生の学びがとっても楽しくなってきます。そんなことを気軽に出来るように、それを私たちの農場の特徴として育てていきたいなと思うのでした。(アキオ)
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畑が教えてくれたこと ニュースレター8月号より

畑がおしえてくれたこと2

< ひたすらに草を引く >

今年のおぐらやま農場のウーファーさんは、今までで一番たくさん草引きをしているかもしれません。果樹園では機械を使っての「草刈作業」となるのですが、野菜畑では手で草を根っこから引き抜いていく作業が中心になります。主にトマト畑に張ったマルチのすぐ際の部分、そしてケールやサツマイモ、長ネギ畑の畦間、家庭菜園ではトウモロコシや落花生、キャベツやオクラなど、ビニールハウスの中には夏野菜のナス・ミニトマト・ピーマン・きゅうりたちと、様々な作物を植え付けて、そこから生えてくる雑草たちを引き抜いていきます。

マレーシアの農業大学から、インターンシップとしておぐらやま農場へ3か月滞在している4人の大学生たち。黙々と草引きが出来る働きものです。少々お天気が照っても平気です。マレーシアの陽射しに比べれば信州安曇野の照り付け方など大したことはないのです。将来、自分の仕事として農業を選んでいる若者達ですから、それに向かっての覚悟も見える気がします。
彼らを見ていて、自分が「農業」という仕事を、自分の仕事としてやっていこうと「覚悟」を持ったのはいつごろだったかなと、考えていました。夢や憧れでいる段階と、その段階を通り抜けて、この仕事を選んだからこそ感じられる愉しみや、背負うことになる事、それらを一通り体験してみて初めて自分の中に生まれる「覚悟」があると思います。それは農業という仕事に限らず、商人には商人の覚悟、学校の先生には学校の先生なりの覚悟がきっとあるのだと思いますし、警察官でも、政治家でも、どんな仕事にもそれを通して社会とつながったり、自分を成長させてくれたりという仕事観です。

まだ20代前半の頃、牧場で仕事をしていました。乳牛の繁殖担当の場を得て、人工授精や牛のお産の世話をしておりました。1000頭以上成牛の飼育されていた大きな牧場でしたから、ほぼ毎日親牛が仔牛を産みます。仔牛は生まれてから30分以内に母牛から搾った「初乳」を飲むことでその後の健康や成長具合に大きな違いが出てくると言われており、お産担当の時はなるべく出産に立ち会い、首尾よく初乳を搾って仔牛に飲ませてやるのが大事なポイントな訳です。(初乳の中には仔牛の身体を様々な病原菌などから守ってくれる免疫成分がたくさん詰まっているのです。) 

1000頭の成牛が飼われていても、毎日平均的に生まれてくれたら、牛たちは1年でだいたい1産するので1日3頭ぐらい生まれてくる計算なのですが、夏場に牛乳消費が伸びるのでそこに合わせて生産する為に、4月5月頃のお産が多くなるように計画するので、春はお産ラッシュになるのです。さらにどうしても偏りが出ますし(満月近くの夜などはよく生まれる)、一日で十数頭の出産を見守り、初乳を搾って仔牛に飲ませるということが延々と続く時期がありました。牛のお産は昼も夜もあまり関係ありませんから、真夜中も、朝までも、お産を見守り、時には難産の介助で母牛と息を合わせて仔牛の足を引っ張ったりと、無我夢中で、寝食を忘れて仕事をしておりました。目の前にある事実に合わせていく面白さを、理屈でなく感じていたように思います。もちろんその当時の僕を周囲で見守ってくれたたくさんの方たちの愛情があってこそなのですが。その後、訳あって牧場の仕事に区切りを付けるのですが、一度自分の中に息づいた覚悟が消え去ることはなく、16年前に自分たちの農場を始めるという暴挙に(?)つながってしまう訳です。

草が伸びてきたら草を引く(草を刈る)という行為も、目の前にある事実に合わせていく行為です。作物の成長に合わせて何ができるか何が必要かを見定めて、手を打っていくことの連続。牧場時代の対象は牛たちで、おぐらやま農場を始めてから果物の樹や野菜たちになっても、生命の本質は、全く変わらないと思います。さらに農場を始めて、畑の土と深くかかわるようになってから、人間の目にはっきりと見えない微生物・菌類たちの圧倒的な生命環境の存在を知るようになって、その「覚悟」の深まりを感じるのです。

お陰様で、夏に淡々と草引きを続る面白さが分かってきました。やるべきことをやっていくという楽しい覚悟。今なら桃の収穫時期に合わせて収穫し、それをすぐに発送していく面白さ。さらに、どうやったら草が少なくなるか、スムーズな仕事になるかと、淡々と仕事をする中に改良の視点が生まれる。これも覚悟あってこそです。大勢ウーファーさんが来てくれますが、その仕組みをくみ上げていくのも覚悟あってこそだと思います。若い人たちが、ウーフの暮らしの中で何を感じ取っているのか、僕たちの立ち居振る舞いから、言葉の端々から何かを感じてくれたら嬉しいと思います。


< たんじゅん農交流会にて 今回は国際的に >
7月11日に今年2回目のたんじゅん農交流会を開きました。今回は南米ボリビアのバジェグランデ市という町の市長さんがなぜかおぐらやま農場の果樹園の見学、研修に来るということで、「それならぜひ、たんじゅん農に触れてほしい」と思い、おぐらやま農場と近隣の炭素循環へ転換中圃場を見学し、「城さんのたんじゅん農講座」で面白い話をたくさん聞いてもらいました。。

まだ40代の若い市長さんで、とっても熱心に話を聴き、質問などもされていました。ボリビアの農業はここ10数年で大きく様変わりしてしまい、肥料・農薬に頼らなければいけない形になってきてしまったそうですが、それを有機農業で営農していける方法はないかという市長さんの願いに少しでも適う研修にしたかったのです。

よくよく市長さんの話を聞いていると、「日本のどこかで、有機農業を学び実際に営農していける若い人材を育てたい。その研修先を探している。渡航費は市の予算を付けられる。」と、実は市長さんなりの隠れテーマがあったことを知りました。

私達の農場がそれに応えられるだけの地力を持っていればいいのですが、まず言葉の問題(スペイン語は全くわからない)、そして農場のレベルの問題、いろいろ課題はあります。でもいつの日かそんなことでボリビアという国に貢献できる機会が来るとしたら素敵なことだなと、野心めいた思いが出てきたのも事実です。

今はマレーシアの農業大学の学生がインターンシップをかねて4人ウーフに来ています。3か月の滞在もあと2週間もありません。彼らにとっても今回のたんじゅん農交流会はとても刺激的だったようです。無理なく品質と収量を伸ばす有機農業のベースに炭素循環がある。世界中どこでも通用する原理です。 (あきお)

畑が教えてくれたこと ニュースレター7月号より

畑がおしえてくれたこと2

< 季刊誌「安曇野文化」への寄稿 >

安曇野市には教育委員会主導で発刊されている季刊誌「安曇野文化」というものがあり、その編集委員の方から声をかけていただいて、ウーフホスト農場をテーマに寄稿することになりました。農繁期真っ盛りの中、締切に数日遅れつつも、どうにか提出したものを皆さんにも読んでいただきたく、掲載させていただきます。


< 「地域に活力を」欄へ >
私達は16年ほど前にご縁のあった三郷の小倉地域に新規就農させていただき、果樹園・野菜畑等耕作しながら生計を立ててきました。地域の皆さんに時に迷惑をかけて叱られたり、時にアドバイスをもらって励まされたりと、様々な関わり・交わりのおかげで、これまで営農を続けることが出来ました。本当に感謝しております。


昨年、仕事の関係で知り合いになった中萱の野本教子先生が、我が家でいつも見かける若い外国人たちの様子に興味を持たれて、「いったいどんな人たちがこの農場へ来ているのですか?」と質問いただいたことが、今回の原稿を書くきっかけとなりました。


私たちは10年ほど前から「ウーフ(WWOOF・World Wide Opportunities on Organic Farms「世界に広がる有機農場での機会」の頭文字です。)のホスト農場」に登録して、年間数十人のウーファーさん(ホスト農場でお手伝いを希望して我が家に滞在する人をこう呼んでいます)達を受け入れています。現在国内に500以上のホストさんがいます。


日本人が2割ほど、台湾や香港・シンガポール・タイなどの東南アジア系の人に人気があり、欧米系の方もきます。長い人は数か月~1年近く、短い人は1週間程度の滞在で、人により目的もさまざまですが、ほとんどが10代後半~20代の若者たちですので、将来の生き方を模索したり、自分探しの旅の途上といった人が多いのは当然でしょう。ウーフではホストとウーファーでお金のやり取りをせず、「農作業のお手伝い」と「食事・宿泊」の交換をするのが特徴ですのでお金目的の人は一人もおらず、「有機農業を学びたい」、「日本語のトレーニングをしたい」、「日本の生活や文化を知りたい」、「面白そうな暮らしをしている人に会ってみたい」など、ホスト農場で出会う人や農作業体験、田舎暮らし体験から何かを学びたいという人たちが、私たちの農場を尋ねてやってくるのです。「労働」とは質が違うので「労働ビザ」は必要ありません。(入国管理局で揉めない為にもここの線引きは結構重要です。)


もちろん私達がホスト農場を続けているのは「農作業のお手伝いに来てもらいたい」という目的がはっきりとあります。新規就農で親戚も知り合いもゼロからのスタートだった私達にとって、丁寧な世話が必要の果樹園・野菜畑を切り盛りしていく為にウーファーさんに来てもらうのは有り難い事。ただ、それだけが目的であるならきっと10年以上も続いていないと思います。家に知らない人が次々やってくる、しかもほとんどは日本語の解らない外国人。3食毎日用意して、話し相手にもなって、農作業も素人同然で、一から手取り足取り教えたと思ったら覚えたころに帰っていく。社会で仕事などしたこともない若い子たちには多くを求められない場面もありますが、受入側がそれを工夫していくところに面白味があります。


これを自分たちの生活スタイルとして選択するのは農業者としてマイノリティであることは自認しますが、こんなことが楽しく面白くやれているのは、心の広い妻の存在抜きには語れません。農家の暮らしを縁の下で支え、3人の子どもたちの母親であり、ウーファーさん達のよき相談相手になり(私より彼女の方が英語は達者ですので)、いつも力の抜けた明るさでみんなを安心させてくれています。僕も彼女もきっと若い人たちを受入れすることを通して、成長させてもらっているのだと思いますし、「人間を信じられる」経験が、子ども達の心の発達にも影響しているように思います。


例えば今はマレーシアの農業大学の学生が4人、農業研修をかねて来ています。彼らは敬虔なイスラム教信徒。毎日5回のお祈りは欠かさず、ちょうど6月上旬から7月上旬まではラマダン(日中は断食をする儀式)期間にかさなりましたので彼らは朝2時過ぎ(朝じゃなくて真夜中)に起きて、寝る前に用意した食事を食べ、夜7時過ぎの夕食までずっと食べ物も飲み物も水さえも口にしません。しかし、その期間中も全くそれまでと変わらずよく働き、食事準備や家の掃除なども率先してやってくれる気持ちのいい4人の若者たち。日本においてマスメディアに登場する時のイスラム教は過激派のテロリストとセットで出てくることがほとんどなのに、日常の暮らしを共にした時に感じるイスラム信徒のなんと平和的な精神。このギャップに気付かせてくれるのもウーフならではの醍醐味と言えます。 


安曇野市には現在6か所のウーフホストがありますが、もし10か所も20カ所も個性豊かなウーフホストが増えて、国内・国外の旅人や若者たちに、仕事の楽しさや生きていくことの素晴らしさを共有できる空間が数多く生まれてくると、この安曇野という町が「ウーフの聖地」として発展していく日が来るかもしれない、などと妄想しているのです。やってみたい方いませんか?(ウーフホストは専業農家でなくても大丈夫。持続可能な農やエコロジカルな暮らしを目指している場所ならエントリー可。事務局の審査あり。)


< 桃畑にて >
ウーファーさん達に桃の袋をかけてもらう前に、桃の仕上げ摘果を私がやっております。問題になるものは一つ一つ確認して木から外し無駄に袋をかけないようにします。樹上に着けておきたい着果数も頭に入れつつ、「つけるか」、「落とすか」総合判断力が求められるので、約14000個全て責任を持って農場主が見回ります。そのあとをウーファーさん達が袋をかけながら追いかけてきます。


下の写真は理由があって木から外した実の例。親指のところから時計回りに、①穿孔(せんこう)病。強風・強雨等で果実表皮や葉っぱにウイルスがとりつき黒い穴をあけてしまうのです。桃農家はこれが怖くて殺菌剤を小まめに撒き続けます。②次が枝ずれ。強風の多い年は傷果が多く出てしまいます。③一番右は核ワレ果。桃の縫合線と言われる線の左右で大きさにバラつきがあるものは中の種が割れている可能性が高い。味に渋みが出やすく極力外しておきます。④下の実はヘタの右横にカメムシが吸汁したあとが見えます。果実が大きくなってもあばたのような跡が残ってしまうのでこれも極力とります。選別に合格した選ばれたものが、皆さんのところに届く桃になります。お楽しみに! (あきお)

畑が教えてくれたこと ニュースレター6月号より

畑がおしえてくれたこと2

< 加工トマト栽培と新品種紹介 >

おぐらやま農場で作っているトマトは加工トマトとかジュース用トマトなどと言われているタイプのもので、松本・安曇野地域ではこのタイプのトマトを作っている農家がたくさんあります。4月の育苗を経て、5月中旬から下旬にかけて定植し、7月下旬から9月中旬ころまで収穫が続きます。


栽培期間中の降雨量が他県に比べて少なく、病気にかかりにくい点で適地と言えるのだと思います。このタイプのトマトの味は酸味の強いものが多く、ジュース加工したり加熱調理すると抜群に味が良いので、一般的にはトマトジュース・トマトソース・ケチャップなどを製造する県内の食品会社へ、農協さんを通して納品する流れが出来ています。


おぐらやま農場では、農場で販売するトマトジュース・ケチャップの原料とするほか、「安曇野トマトの会」という、有機栽培加工トマトを栽培する生産者グループの仲間に入れてもらって、有機栽培加工トマトを必要とする埼玉県の食品メーカーへ毎年共同出荷しています。


農協さんの栽培指導では5月の定植から収穫期までを通して10回程度の農薬散布をして、トマトに害虫(オオタバコガ幼虫やヨトウムシなど)や病気(疫病・葉かび病など)がつかないように管理しますが、「高橋ソース」(「カントリーハーベスト」というブランド展開で、とんかつソースや中濃ソースなどいろいろ出しているので、スーパーの売り場で見かけることがあるかもしれません。そ


の中にはおぐらやま農場のトマトもたくさん入っています。)という埼玉県の会社が、「オーガニックのトマト原料が欲しいけれど、作ってくれる生産者さんはいないだろうか」とあちこち探した末に、安曇野では有機農業草分けの穂高の藤沢さんに声がかかり、藤沢さんが地元の若手農業者に呼びかけてできたのが「安曇野トマトの会」という生産者グループです。このグループでは殺虫剤も殺菌剤も有機JAS認証のある農薬も、一切使用しない事をグループの決め事として栽培してきました。15年ぐらいの歴史がありますがだんだん会員生産者が増えて来て、今は10名程度で共同出荷しています。


ただこれまでは会員農家の誰もが安定して高橋ソースさんへ出荷できている状況ではなく、お天気次第で収穫量の変動が大きく、良かったりダメだったりを繰り返してきていました。雨の多い夏には疫病が多発しトマトの葉っぱが溶けてなくなってしまったり、梅雨明けの猛暑でトマトが日焼けで腐ってしまったり、ちょうど条件が揃った年はまあまあの収穫量があったりと、本当にお天気次第。でもこれでは経済的に続かないし、有機栽培に取り組む農家も増えてこない。先ほど10名程度のメンバーがいると言いましたが、これも出入りが結構あっての数字。何とかここを安定させなければと、おぐらやま農場は炭素資材をたっぷりつかった畑づくりに取り組み、水はけのいい圃場にするためにサブソイラをかけ、スプリンクラーの水を止めて、日焼け防止のワラを用意し、その他さまざまな積み重ねでこの2年ほどはそれまでより収穫量を上げてきています。


昨年は収穫はじめからすごい勢いで収穫できていたので、これはいいぞと手ごたえがあったのですが、お盆過ぎから2週間続けて雨がほぼ降り続け、トマトにとっては悪天候の年になり、だんだんとコンテナ数をへらし失速してしまいました。今年こそはトマト栽培を始めて以来の大豊作を目指したいと、意気込んでおります。


加工トマトは右の写真にあるように無支柱で栽培することが一般的です。普通のトマト栽培では必ずと言っていいほどわき芽摘みをしますが、加工トマトはわき芽摘みをせずそこから咲いた花にも着果させて収穫します。


収穫するのは真っ赤に色づいたトマトのみ。収穫したものは数時間以内に冷蔵庫へ入れて、なるべく早く加工する工場へ運ぶので、青味の残るうちに収穫する必要はないのです。野菜売り場に並んでいるトマトの多くは、店舗へ並べる頃にちょうどいい赤色になるようまだ青味のあるうちに収穫して流通にのせるのです。青味の残るうちに収穫するトマトの栄養価は、色が赤くなってから分析しても、真っ赤に完熟してから収穫したものに遠く及ばないのが残念なところ。リコペンで約3倍、ビタミン類で約2倍違うという数字が出ています。


最近、長野県の農業試験場が、「リコボール」という品種のトマトを育種しました。完熟トマトのリコペン含量がこれまでの品種の1.5~2倍含まれる為、明らかに赤が濃いトマトです。リコペンはトマトやスイカなどに含まれている赤い色素で、抗酸化作用がアンチエイジングや、ガン・動脈硬化・心臓病などの疾病予防にも効果があると研究結果が発表されています。おぐらやま農場では昨年から栽培を始めたのですが、色の違いは他の品種の加工トマトと見分けが容易につくほど。トマトジュースにしても赤が鮮やかで味覚的には酸味がまろやかになりとても美味しいトマトです。おそらくこれから生産する農家が増えてくるでしょうが、たんじゅん農の畑で作られてくるリコボールのトマトジュースを今年は皆さんにたくさん使ってもらえたらいいなと思っています。


おぐらやまのトマトジュースはそのまま飲んでもよいし、濃度がありますのでトマトピューレとしてスープや煮込み料理に使っても便利なものですから、台所に常備して皆さんのアンチエイジングや健康づくりに活用してほしいと思っています。トマトについては熱をかけてジュースにしたり調理してもリコピンやカロテン・ビタミンE等の抗酸化物質が壊れにくく、逆に吸収がよくなるので、どんどん調理して下さい。生野菜でサラダに使ってももちろんよいですが、トマトの旬は夏。本当に身体に効いてくれる栄養成分を濃度高く含んでくれた完熟の真っ赤なトマトを一年中使えるようにトマトジュースは作られています。皆さんの食生活の一部にぜひしてみてくださいね。


トマト料理で有名なイタリアという国は北と南で食文化に違いがあり、一人あたりの年間トマト消費量が北で約40キロ、南で100キロ程度(ちなみに日本人平均は10キロ以下)。北イタリアはトマト料理もありますが、肉食・乳製品の食文化です。そして消化器系がんの発生率は、北が南の2倍以上となっていて、明らかな違いが出ています。年間100キロ(一日約270g)を使う食生活を想像してみましたが、トマト農家ならこれも可能かもしれないと思い始めました。でもそうではない皆さんにもそれぐらい使ってもらえたら嬉しいです。きっとお肌もすべすべに、そして基礎代謝が上がって、メタボ体質からもさよならできる可能性大です。最近「夜トマト健康法」という本が出ていたので読んでみたら、夜にトマトを取ってから睡眠することで基礎代謝が上がるという事でした。自分の身体で実験してみます。(あきお)

畑がおしえてくれたこと 2016年5月ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

< 使えるものは何でも使う >

5月4日に、たんじゅん農実践者交流会を安曇野で開催し、20名以上の方が集まりました。6年前に私たちの農場で転換開始してからほぼ年1回か2回開催しています。今回は「炭素循環農法・百姓モドキの有機農法講座」というウェブサイトを執筆しているブラジル在住の林さんが来てくれて一緒に畑見学をまわってくれ、いろいろなやり取りがありました。たんじゅん農へ転換して6年以上経過した圃場やこれから転換していく畑や、いろんな状況の畑見学ができました。

最近、たんじゅん農実践者で「太陽熱処理」についてよく話題になります。これは野菜などを植え付ける前に透明ビニールでマルチし、太陽熱で土の表面温度を上げて(70℃程度まで)雑草の種を熱処理しそのあとの雑草管理を容易にする方法として使われていた方法でした。また、慣行農法の野菜圃場ではフザリウムやセンチュウといった土壌病害対策として「クロルピクリン」「臭化メチル」といわれる薬剤が使われ続けてきましたが、効き目がなくなって来たり、費用対効果の面でも大きな問題となって、それに代わる土壌消毒方法として注目されてきています。透明マルチの両端をきちんと土に埋めて張っていくと晩秋から早春の寒い時期でなければ、70℃以上の温度にすることはそれほど難しくありません。

私の場合は人参の作付前に雑草対策としてここ数年は必ず行う方法でした。ところが雑草が生えないだけでなく、作物の出来具合がとても良いという報告が全国から次々と出て、おぐらやま農場の人参もここ数年の人参の出来具合が本当に素晴らしいので、いったい何がよかったのかと分析する為には、この太陽熱処理によって引き起こされている事象をよくよく解明しておく必要があったのです。林さんが言うには「腐敗処理」という側面があるのではないか。つまり土の中にある腐敗するようなものは作付前に意図的に腐敗させておくとその後の土壌環境が発酵しやすくなるのではないかと。太陽熱+腐敗発酵熱で地表面温度70℃の高温と、マルチ被覆直前のたっぷり灌水で水分過多状態、さらにマルチ内の酸素は腐敗過程で全て使い果たされて酸欠状態と、腐敗しやすい環境を意図的に作っておき、腐敗するものはガスとして放出しておく。

太陽熱処理後は、処理前に畑に補給してあった炭素資材(有機質)にキノコ菌たちがのびのびと取りつき、これをエサとして爆発的に増え、土壌の中にコロニーを作って団粒構造化・菌類と細菌が多様化・階層化していく。「腐敗処理」によって、腐敗要因が土の中からなくなり、上記の発酵サイクルがスピードアップするのではないか。これを「土のリセット」というとわかりやすいかもしれません。

これまでも前述の「土壌中に菌類(主にキノコ菌)と細菌類の種類と数を増やす」という目的の為に、土の中に炭素資材を用意してキノコ菌たちがそれを食べ、増えていく環境を作っています。それこそが作物の養分になっていくからです。もちろんそれだけでも畑は変わっていくのですが、2~3年の時間を必要とする場合がほとんどで、なかなか結果が出ないと農業者としては生活がかかっていますから焦りも出ます。さらに雨の多い日本では土の中に大雨が溜まってしまうとその度に、せっかく増えた菌類が水没して死んでしまい、団粒化しかかった所がまた元に戻ってしまうので、水はけのよい畑にするための工夫がいろいろとされてきたのです。これを「腐敗処理」という「死のサイクル」の部分を短時間で通過させ、そのあとにくる「生命のサイクル」を引き込むのです。人参畑の団粒化が大きく進んだ(棒刺しで1メートル以上楽に入る状態)3年前は、まさに太陽熱処理を始めた年と合致しますし、その年から人参の葉っぱを食べに来ていたキアゲハ幼虫が全くいなくなった事も合致します。

たんじゅん農では「使えるものは何でも使う」「不自然な事はしても、反自然な事はしない」とよく言います。ビニールマルチを使うというと、○○農法実践家の方には拒否反応の出る方もいるかもしれません。これが不自然なことなのか反自然なことなのかは落ち着いて考えてみる必要があると思います。人間の頭がその人なりに作り上げた「自然」のイメージと、目の前の自然現象・土壌の変化や作物の成長の背後にある事実とを混同してしまうと混乱のもと。もちろん「透明マルチで太陽熱処理をすることが炭素循環農法だ」と言いたい訳ではありません。今の状況を把握して、臨機応変に「使えるものは何でも使う」で、どれだけ頭を柔軟にして、自由な発想で目の前の作物や土たち微生物たちに関わっていけるかが面白い所だと思います。

「焼き塩」の話も出ておりました。塩を焼くと塩の性質が変わるそうです。もちろん味も変わります。そして水に溶かして畑に撒くと雑草が減るという方がいます。本当でしょうか。一度やってみようと思います。昔の塩はにがり成分が多く空気中の水分を吸着して塩そのものがべとべとしており、料理の時に使いやすくするためにも、一度焼くか炒るかしてサラサラの塩にしておく家が多かったと聞きました。製塩技術の変化で、サラサラに塩が作れるようになると焼いて使う人はほとんどいなくなり、現代ではほぼ見かけなくなっています。焼き塩には還元作用が働くようですので、焼き塩を浴槽に入れると温まり方がよくなりお肌もツルツル、もちろん飲用してもよいし、農薬のついている食材を付けておくと化学物質の中和、畑に撒いて使えば発酵促進と、いろいろな使い方が出来る。これも必要とあらば「使えるものは何でも使う」ということです。

そんな話題も満載で楽しい交流会になりましたが、初めて参加していた方で、小布施で無農薬栽培りんごに取り組んでいる方がいました。ただ、病気や虫に毎年さらされてだんだん樹が弱って収穫量が減少しているのでどうしたらよいだろうかと悩んでおられました。志を持って取り組んでこられたこれまでの道のりを思うと、本当に頭が下がりますが、農業に取り組む限りは基準にするのは自然でありりんごの樹や畑の土です。人間の「農薬をかけるのは嫌だ」という思いが基準になり目的化すると無理が出ると思いますが、その圃場で何が起こっているのか、ぜひ一度見学に行かせてもらいたいと思っています。Hさん、その時はどうぞよろしくお願いいたします。

それから、横浜から参加されていた果樹農家のYさん。福島の原発事故以来、横浜でこれまで手掛けてきた梨やブドウ・柿等の果樹園で収穫した農産物から放射能が検出されてしまって、すっかり生産意欲を失っておられました。今もメルトダウンした原発から放射能が出続けているし、この先自分の出荷した農産物が原因で誰かの健康を害することになるのであれば、もう横浜は引き払って安曇野辺りでやってみようかなという事を最後の懇親会の席上でお話されていたのです。
東北・関東の農産物から今も放射能が検出されてしまうというのが事実なのか、私はよく知らないのですが、原発事故で放射能の影響を受けた地域の場所でたんじゅんに取り組んでいる人たちの多くは、土壌微生物の発酵過程で放射能除染が出来るとみている。「使えるものは何でも使う」がここでも出てきます。そして何より畑や仕事に向かう意欲が放射能に負けていないのです。Yさんにも、意志をもって営農に取り組む人たちの輪の中で、これからの道を探ってもらいたいと思っています。(あきお)

畑が教えてくれたこと 2016年4月ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

< 鉱物利用の知恵 >
これから約1か月は、桃・梨・洋梨・りんごと順々に花が咲いて受粉し、それぞれ結実を確保していく時期なのですが、一番大きな問題が低温・凍霜による受粉・受精障害です。

50年に一度とも言われた3年前の凍霜害はまだ記憶に新しく、4月25日に積雪、氷点下5度まで朝の気温が下がり、桃・梨・洋梨・りんごすべてに甚大な被害がありました。桃は受精した直後、梨はまさに満開、りんごはこれから咲いていこうとフワッと蕾が開きかけたタイミングで霜にあたり、多くの花が枯れ受粉不能となり、どうにか受精したものも変形果が多くなりました。当然大きな減収となり経済的にも大きなダメージでした。

こちらも無条件降伏という訳にはいきませんから、もみ殻の山を畑にたくさん作って灯油をかけて燃やして回ったのですが、果樹園が3町歩以上になり、場所もそれなりに離れている果樹園全部を一晩中回って火を維持するというのは、相当スタッフを揃えないと無理なことです。先回も実際に手が付けられたのは全体の3割ほどでしたし、モクモクと火を起こしても、マイナス5度まで行くとさすがに効果も限定的にならざるを得ないのです。

*「霜ガード」という製品を2年ほど前に、取引業者さんから紹介してもらってありました。今年は果樹の開花予想が例年より1週間以上早くなるのではないかと言われていることもあり、使ってみることにしました。原料はゼオライトと言われる鉱物。この鉱物の結晶の形状がとてもユニークで、微小な隙間が多い、多孔質と言われる特徴を持っています。これを粉末の形にして水に溶かしスプレーしておくと、花蕾を包み込む布団のような役割を果たしてくれます。昼間の暖かい空気を捕まえて逃がしにくく、夜になっても持続して低温時にも影響が緩和されるのだとか。また多孔質材料は水分の吸着作用があり、花の周りにゼオライトが付着している事で夜露等の水分が吸着し、霜・氷の作られにくい状態になります。

人間の体内に入っても大丈夫なの?と思われる方もいるかもしれませんが、牛や豚の畜産現場で、飼料添加物として使用し、消化機能・飼料効率の向上や、発育促進、肥畜期間の短縮、下痢の予防および治療、整腸、貧血の予防、糞尿の脱臭等に役立てられることが分かっています。土壌改良剤として使われることも多く、人体とは相性がいいものと思われます。

調べてみると面白いことがたくさん書いてあって、アンモニウムイオン・鉄イオンなどの吸着作用を利用して水質浄化プラントや水のろ過材として使われたり、吸湿作用・脱臭作用を生かして住宅建材などに使われたりと、実は私たちの暮らしの下支えをしてくれているものだったのだと初めて知りました。

凍霜害防止への効果がどの程度出せるかは、何度か使ってみて実績を見てみないことにはなんとも言えませんが、あちこち情報を集めてみると、マイナス4度の低温でも大丈夫だったとか、使わなかったところとの差が歴然としているといった声を実際に聞くことが出来ました。 このようなものを開発してくる知恵があるから人間ってすごいなあと思います。もちろん霜ガードでもう霜については全く心配なしという訳にはいかないでしょうが、一つ一つの知恵の積み重ねが凍霜害の影響を少なくして、果樹園の花を健やかに咲かせることが出来るのだと思います。
果樹園で使う「石灰硫黄合剤」や「ボルドー液」も鉱物利用の農薬です。石灰硫黄合剤は名前の通り石灰と硫黄の合剤、ボルドー液は石灰と硫酸銅を合わせたものの通称です。おぐらやま農場の果樹園での農薬散布は、使用量は一般的な果樹栽培の4分の1程度になりましたが、使うものは可能な限り上記のような鉱物利用のものを選択し、まだ化学農薬も使っておりますが、近年自然環境と人体に悪影響が強いと言われているネオニコチノイド系殺虫剤は4年ほど前から選択から外しました。ただ、私が大切にしていることは、使わせていただく限り「農薬」も感謝の気持ちを持って使わせていただくという事です。

*石灰硫黄合剤・・主に春先の花が開く前、若葉が出てくる前に散布し、カイガラムシ・ハダニなどの殺虫剤として、また桃に対しては縮葉病、りんごに対しては腐乱病・黒星病などに卓効があります。安全性については、硫黄分も、石灰成分のほとんどを占めるカルシウムも人体必須元素・植物必須元素で、これら生命体の構成に必要なもの。果樹園に散布しているときは果樹の樹たちを温泉に入れている感覚です。ただ濃度には気を付けなければならず、ペーハーが強アルカリなので葉や花に着くと薬害を起こしやすく、散布時期は落葉後の冬から早春の時期に限られます。また人間の肌についたり目に入ったりすると濃度によっては障害を出す恐れがあるので、合羽・マスク等の着用を怠らず、十分に注意して散布しています。石灰硫黄合剤は農産物の有機認証(有機JAS・日本農林規格)制度でも認められている農薬です。1851年ごろにフランスでブドウの病害に対して効果があることが分かったということですので、もう160年以上の歴史があるものです。

*ボルドー液・・石灰と硫酸銅を混和して作る農薬で、こちらも1882年にフランスのボルドー大学の植物学教授だった人が、ブドウ園の盗難防止のために石灰と硫酸銅の混和物が撒いてあった所だけ「べと病」がないことを見つけたことが始まりと言われています。銀イオンや銅イオンに殺菌作用があることは昔から知られていました。銅イオンを利用した農薬はボルドー液だけでなく数種類あります。化学農薬に比べて耐性菌が出来にくいのも特徴の一つです。銅そのものは栄養機能食品として厚生労働省が認めているものですから(もちろん適正な摂取量を踏まえて)人体に対して親和性のあるものです。また石灰が強アルカリであることからそれ単体では薬害が出やすいのですが、硫酸銅混和でそれを緩和することが出来、葉が展葉してからの時期にブドウやりんごなどに殺菌剤として利用できる長所があります。ボルドー液も有機JAS認証で認められている農薬です。

「鉱物」は地球が太古の昔から地球生成活動の過程で生み出してきた、神様からの贈り物、天恵です。先人たちはただそこに転がっている石や岩を掘り出してきて分析し、用途を調べ上げ、様々な組み合わせを試し、いろんな可能性を見つけ発展させてきました。農業分野で使う時は「土や人体との親和性」をよく調べて、いのちの仕組みに逆らわない上手な使い方が求められます。
*ホッキ貝殻焼成粉・・鉱物とは少し違いますが、昨年から農場でも販売している「ホッキ貝殻焼成粉」に、強アルカリでの殺菌作用や還元作用・化学物質の洗浄作用があり、食物の腐敗防止・食中毒防止や食品産業での機械・器具の殺菌に使われています。これを農業利用できないだろうか、というのがおぐらやま農場の今年の課題の一つ。これも耐性菌が出来にくく、人体との親和性がよい方法だと思います。強アルカリなのに肌荒れなどのトラブルが起こらないのも不思議です。皆さんにどんな報告が出来るか、気長に楽しみにしていて下さいね。(あきお)

畑が教えてくれたこと 2016年3月ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

飯島秀行さんという方がいました。「いました」というのは先日訃報を聞いたからです。テネモス国際環境研究会をやられて、「宇宙にたった一つの神さまの仕組み」を実験で検証し、この世に問い続けてこられた方でした。私は3年ほど前にある人から著書を差し入れてもらって読み、動画サイトで講演を何本か聴き、「原因と結果について」、「発酵することの本質」、「フリーエネルギー」、「原理一元の世界」等々についての記述に触れて、自分自身が感じ、思考する機会を与えてもらいました。
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ただひとつの神の法則が存在することを あらゆる実践と実験で検証していった

虫が発生しない農業栽培ができた
有害物質は消えた  汚れた水は綺麗になった  放射線も消えた
糞尿・悪臭の改善も 風力発電を使った水の浄化もできた

すべてを解決できるテクノロジーは 確かに存在することがわかった
いくつかの装置も完成した しかし世の中に提供するには
多くの困難が待ち受けていた

宇宙に遍満する無限の周波数と  人々の心の周波数が一致する時に
初めてそのテクノロジーは  この世の中に実体となって  存在できるようになるのだろう
そのような社会の到来が一刻も早く実現することを願ってこの本を記した
       ( 「ぜんぶ実験で確かめた 宇宙にたった一つの神さまの仕組み」 裏表紙より )
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「すべてを解決できるテクノロジー」と書いてある事例については、大気汚染防止(実用化されている製品がいくつもあります)、水質浄化(河川湖沼やプールなどの浄化装置も作られました)、排水浄化(トイレや畜産施設などでも使われています)、土壌汚染の浄化(福島の農地に降り積もったセシウムが除去されています)、次世代フリーエネルギーの研究(永久運動を可能にしたモーター開発や高効率の風力発電など)と、一貫してこれからの地球環境問題に必要とされているホンモノの技術です。企業営利や売らんが為の商品開発の為の研究などと一切関係のない視点と実践が本当に見事だと思います。

他にも鳥のように自由自在に飛び回る飛行機だったり、私が一番注目してしまう農業分野では虫が発生しない完全無農薬栽培の実証と、その研究範囲の広さに驚き、そして一見多岐にみえる数々が、実はたった一つの原理・法則から生み出される。フリーエネルギー研究では日本の第1人者と言っていいのではないでしょうか。たくさんの事例紹介は動画サイトにたくさん出てますので興味のある方は調べてみて下さい。

だけれど飯島さんは、どんなテクノロジーもこの社会に浸透していくには、その社会に住んでいる人たちの意識・心と周波数があってないと実際には使えないのだと言います。意識そのものがフリーエネルギーであるということに気が付かないと、本当の意味でフリーエネルギーは使えないのだという事がまだ私自身が消化しきれていません。数々の環境問題・社会問題を解決できるたった一つの原理・法則が、自分の当たり前の意識・基準になればりんごの無農薬栽培も、トマトの反収20トンも、魂(オーラ)をきれいにする食物も、おそらく簡単に解決できてしまうでしょう。本を数回読んだくらいでそれがクリアできるような感性が、残念ながら私にはまだないのですが、これが今生の私の課題でありフィールドです。

そんな段階の私ですが、飯島さんが書かれていた言葉で私が特に意識したのは「自我で生きているか、全我で生きているか」というフレーズでした。「農作物と向き合う為に農作物に話しかけてみよう」という発想から、「目の前にわたしの分身がりんごの樹の姿をして生きている」という観方が当たり前の感覚なのかなとだんだんに意識の焦点が見えてきたようです。飯島さんの残した言葉の真意に少しでも近づいてみたいのです。合掌。 (あきお)
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想念は実現の母と言います。もちろんよい想念はよい結果を生み出し、悪い想念は悪い結果を生み出します。大事な原点の選択です。よい想念とは、人のためになることを指すのではないのです。私は全体の中の一員であって、個人的な人ではない、私とあなた方とは一体であって、他人的存在ではない、という思いから行動をすることを、真の真理、正しい想念と言います。 私は私であっておまえたちとは違う、という分離感からでる行動をすることを、偽りの真理、間違った想念と言います。この想念が正と偽、幸福と不幸をもたらす、原点・スタートの選択肢だからです。

真理とは、原点・スタートの時点で結果は出ているのです。その者の心が持つ選択、動機で初めから決定しているのです。だから宇宙意識を持つこと、宇宙一体感を持つことが幸福を生み出し続ける事なのです。天国と言います。 人のためと言いながら、個人的動機の心でどんなに仕事をしても、小さな結果、有限性にしか変化しません。地獄と言います。天国と地獄は真理の中に存在しているのです。( 「宇宙にたった一つの神様の仕組み」本文より抜粋 )

< おぐらやま農場とご縁を頂いた皆様へ 「健康素材」(鉱石スープ)を様々な用途にお役立て下さい >  
私達は、農場からお届けする農産物が、皆様の健康に役立てるよう、畑の微生物環境や土壌発酵に取組み、肥料や農薬に頼らない栽培を確立すべく16年前より実践しています。りんごや人参・トマトなどの品目を選択していることもあり、病身を抱えている方、御家族に病身のある方、また今は病身でなくとも食養生の意識を持つ方たちが、低農薬の果物、無農薬栽培の野菜をご自身の身体づくりに必要とし、私達と御縁を頂くことが年々多くなりました。

私たちは昨秋より「健康素材」提供の窓口となりました。この鉱石スープは自然界の様々な場面で生命の成長に良い影響を及ぼします。土壌に撒けば汚染された土が浄化され、川に流せば水がきれいになり魚が成長し、家畜では病気で死にかけていた子牛が復活して松阪牛並みの等級になったりします。(しかし出荷半年前にスープ飲用を止めます。続けると赤身の筋肉が締まった肉になるので、霜降り肉にする為に止めるそうです)田んぼでは稲の根の成長が非常によく台風でも倒れない丈夫な稲になり収穫量・食味共によくなり、おぐらやま農場のりんご畑でも食味収穫量に大きな違いがはっきりと顕れました。ただ、「人間ではどうなのか」を説明しようとすると法律の壁があります。人間も動物も植物も全て同じ、地球の生命の法則で生きていると考えられた方たちがご自身の判断で使われています。病身を抱えていた方たちがこの鉱石スープを自己判断で使ってみて、驚くような事が起こっています。「いのちの元」に大きく影響しているとしか考えられない変化です。現在一部の「医師・獣医師・大学の研究グループ」でも研究・使用されて驚くべき結果が出ています。ここではすべてを書き表せない事が起こっています。本当に目の前で困っている人に対してお役に立てるのは、「100の理屈より、事実の積み重ね」だという信念で、皆様に紹介しています。身近に病身を抱えて困っている人がいる方、またその当事者という方、おぐらやま農場・松村まで声をかけて下さい。ガンや糖尿病、脳梗塞、肝硬変等々、どんなことでも時間の許す限り御相談に乗ります。人間がもともと持っている「治す力」を発揮する学び。「健康素材」(製造地・静岡県浜松市)の資料もサンプルも用意してあります。(あきお)

畑が教えてくれたこと 2016年2月ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

< りんごの「規格外」 >

先日、地元紙に安曇野市の北隣にある松川村・大町市のりんご農家の方たちの記事が出ていました。「小さなりんご」に焦点を当てた取り組みだということです。
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規格外小玉リンゴ 大町・松川でブランド化へ

大町市と松川村のリンゴ農家7人が「bite sized apples club」(バイト・サイズド・アップルズ・クラブ)を結成し、規格外の小玉リンゴのブランド化を進めている。リンゴの消費が伸び悩む中、都会の若者や女性をターゲットにファンを増やし、小さいからこそ食べきれる手軽さ、見た目のかわいさ、携帯性などを売りに価値を高め、新たな市場開拓を狙う。

「bite sized apple」(以下バイトサイズ)は、丸かじり、食べきれるリンゴという意味。大きさはテニスボールほどで200グラム前後。品種は問わず、1個100円で販売。名称の商標登録を出願中だ。

「味は普通のリンゴと変わらないのに、小さく規格外というだけで、取引価格は贈答用リンゴの20分の1程度。このまま加工用ジュースにされるのはもったいない」。2年前、県農業改良普及員として大北地域を担当していた高橋博久さん(48、現上伊那農業改良普及センター勤務)が、これを何とかしたいと生産者に働き掛けたのが始まりだ。

高橋さんの呼び掛けに20~70代の7人のリンゴ農家が応え、クラブを結成。「小さいからこそ価値がある。今まで見向きもされなかった小玉リンゴに光を当て、リンゴの消費拡大、農家の収入アップにもつなげたい」

会長を務める松川村の外川果樹園3代目の本多曜介さん(21、松本市新村)によると、近年、リンゴを買わない、食べない若い世代が増えているという。 ミカンは手で皮をむき簡単に食べられるが、リンゴはナイフや包丁でむく手間が余分に掛かる。1人暮らしにとっては面倒で、1人では食べきれずに残ってしまうのも敬遠される理由という。

本多さんは「バイトサイズは、1回で食べきれ、子どもや高齢者にもちょうどいい大きさ。見た目もおしゃれでかわいく、登山客の携行食にも最適」と魅力を語る。


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このグループの皆さんと面識はないのですが、農家自らでブランドを作って販売戦略を立て実践したりする動きがなんとも頼もしく思うのは私だけではないはず。若い人たちや新規就農の面々と100年前から続いているベテラン農家もあるということで、そんなバランスのいい活気のあるグループです。

おぐらやま農場は独立就農して16年目になりますが農産物の販売はほぼ個人顧客の方へ自力でやってきたので、農協さんや公設市場への出荷はほとんどないのですが、安曇野市内のほとんどのりんご農家は農協さんや市場での規格に合わせて撰果・出荷しなければなりません。

農協さんや市場に出すと売り先に困らないので販売にかける時間も労力も資材も思考もなくていいので、生産だけに専念できるというメリットの反面、貿易自由化のこの時代では国内価格が下落し、さらに中間経費を差し引かれて農家の販売する価格が下がり(りんごなどでは農家手取りは小売価格の3割程度)、そして規格外のものは前述の記事の通り20分の1程度の価格になること(栽培技術にもよりますが2割程度は見ておかなければなりません)、そして当事者ではないですが私から見れば最大の問題は栽培方法(剪定や摘果のやり方、農薬散布・肥料の撒き方など)にも規格が作られて管理されるという事があります。

小玉りんごに「バイトサイズアップル」と名前を付け、光を当てて販売するというのは「規格外りんご」を少しでも減らして、収入につなげようという取組だと思うのですが、おぐらやま農場では以前から「まるかじりりんご」という名前で小玉サイズのりんごを販売していました。「バイト」は英語で「かじる」という意味ですので、内容は同じなんですけれど、英語にならない辺りが農場主の田舎っぽい性格から来てしまうのは仕方がないですね。

私達は「自力販売する」という大前提で、それを応援していただいているお客さまのおかげで何とかやってきましたので、「規格」は自分で設定して、それに納得のいく皆さんへお届けする形になり、「規格外」というものがほとんど出ません。「まるかじりりんご」も初めから立派な規格です。農協さんや市場で常識的な価格でとってもらえないのでその部分を「自分たちで規格化してブランドにしよう」という前述の取組みも、小玉サイズが軌道に乗れば、きっと全部の規格を自分たちのブランドにしようとなってくるでしょうし、ぜひその方向へ進むべきだと思います。そうすれば栽培方法の規格という足かせもとれて、より消費者の皆さんにも栽培者自身にも恩恵のあるりんご作りが展開できるはずです。

おぐらやま農場が「まるかじりりんご」として販売してきたのは、「皮ごとかじってもここのりんごなら安心して食べられる」というものを届けたいんだという農場からのメッセージです。消費者の皆さんは通常のりんご栽培に多くの農薬が散布されていることを知っています。国の定める使用基準内ではあっても、少しでもそのリスクを下げたいから皮をむいて食べようと思う方がとても多いのです。

「小玉りんごをまるかじりしよう」というブランドを作っていくのであれば、そこから目を背けてはいけない。青森の木村さんのような無農薬栽培がすぐには難しくても、その山頂に続く道を探し、登れているかどうかを自らに問う。「まるかじりしてください」という言葉にどれだけの意識と実践を込められただろうかを問うのです。 

ここでおぐらやま農場でのりんごの「規格」を改めて紹介したいと思います。ふじりんご収穫後に撰果作業をして、「大玉」・「中玉」・「家使い用」・「まるかじり」・「保存用」・「ジュース原料用」「畑行き」と、概ね7種類の「規格」に分類しています。全て「規格」です。

*「大玉」・「中玉」りんごは大きさが基準内に(中玉は240g以上、大玉は310g以上)おさまり、熟度がしっかり進んで、一応キズや実ワレなどがなく、形もある程度揃っているものです。

*「家使い用」りんごは、小キズ・ツルわれ・こすれ・日焼け・変形など見栄えに問題があっても、食味で美味しく食べられるものを揃えます。大キズや傷みの出ているものは保存性の問題で入れないようにしています。

*「まるかじり」りんごは170~240gのりんごで、小粒だけれど美味しく食べられるものを揃えてあります。携帯に便利。おやつにピッタリ。おぐらやま農場では家使い用が売切れてから販売に出します。今年度も受付開始しましたのでどうぞご注文ください。

*「保存用」りんごは完熟しきっていない(ミツ入りがない)ものを揃えます。「青味」とも言います。これは完熟していないことがかえって保存性を良くするので、春になってから食べるものとして最後の出荷予定です。収穫から時間が経つと酸味がだんだんとまろやかになり、置いた方が美味しいのです。

*「ジュース原料用」は上記5分類から外れたものだけれど、傷んではいないものです。大キズ品、ツルわれの大きいもの、実の柔らかくなってしまったもの、野鳥のツツキ、小粒すぎるものなどがここになります。「りんごジュース」・「人参りんごジュース」の原料とすれば美味しいジュースが製造できます。

*最後の「畑行き」は傷みが進み、ジュース原料には不適のものを、もみ殻・キノコ廃菌床と混和して畑の微生物のご飯に。りんごの糖分が土の発酵スターターとして活躍してくれますので土の中のバクテリアたちは大喜びでしょう。 (あきお)




畑が教えてくれたこと 2015年12月ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

<一枚の葉が教えてくれる>

ふじりんごの収穫時期はおぐらやま農場では毎年11月10日~15日頃に始めることが多いです。これはりんごの開花時期がその年の冬の寒さと春に向かっての温度で決まってくるので、当然早く花が咲けば実をつけて熟してくる時期も早くなる傾向になり、その反対もまた然りですので若干のずれが出ます。またその後の、春から秋にかけての気候がどうだったかによっても変わってきますし、どんな肥料をどんな時期に与えたか、剪定をどう切ったか等と要素がいくつもあるので結局のところはその年の最適な収穫時期を決めるのは毎日の観察に依るところとなります。「毎日の観察」と言えば聞こえはいいですが、要するにその時期になると毎日畑で試食の為にりんごにかぶりついているということです。夏の杏から桃・梨・洋梨・りんごとそれぞれの果物にも数種類があり、それごとに試食が仕事になる訳ですので、食いしん坊の私にとってはなんと素敵な仕事なのでしょうか!

そんなことをもう15年続けてきて、ふじりんごについてよくわかったことが一つ。「葉の色は正直に答えを出す」ということです。11月13日に撮った写真が右上にありますが、これぐらい葉が黄色くなった樹から収穫したりんごならほぼ間違いなく完熟し、透き通るような甘さとりんごの芳香が立ち上るいい味が出てきています。11月中旬を過ぎても葉の緑が抜けずにあるりんごの樹から収穫する実は味にまだ青さが残り、糖度はあるのですが後味に渋み・苦みを感じるものが多いのです。以前からおぐらやま農場のりんご畑では一般的な畑と比べて葉の色が黄色くなる特徴がありましたが、今年はことさらにそれが分かりやすく鮮やかに色づきました。この違いはいったいどこから来るのでしょうか。

愛知県で炭素循環農に取り組む方が先日視察に来られて、こちらの圃場を見学し私からもお話をする中で、りんごの葉っぱの色の話をすると「なるほど、葉物野菜でも窒素分が効きすぎて硝酸態濃度が高くなってしまったものは緑が濃くて一見元気があって美味しそうに見えるんですよ。だけどすぐに傷み始めて商品にならなくなる。食べても苦いんです。私もたんじゅんに出会ってやり始めたら野菜が変わってくるのが分かってきました。味の違いは生で食べてみればすぐにわかりますし、色は緑が薄くなって明るい緑になってきます。きっとこのりんごの樹の葉っぱでも同じことが起こっているのでしょうね。」

りんごの収穫量を増やそうと、NPK(窒素・リン酸・カリ)の「肥料の3要素」と今の農学で言われるバランスがとれた配合肥料を何キロ散布しなさいと指導するところもありますし、その指導に沿って毎年たくさんの配合肥料やアンモニア窒素が散布されます。そして土に使い切れない窒素分が蓄積されて、雨が降るたび水に溶けた窒素分が根から半強制的にりんごの樹に吸われていく。それは晩秋になっても青々と茂り黄色く色づかないりんごの葉っぱたちとなり、そのおかげでりんごの実は丸々と玉伸びして大きくなってくれますが・・。11月末から12月始めで気温が氷点下を大きく下回る日が多くなりきつい霜に当てられた葉は黄色く色づく過程がないまま茶色く縮れて少しずつ落葉していきます。片や一面に黄色く色づいた葉は木枯らしのような風が来るとハラハラと落葉し易く、散り際も見事に潔く散っていきます。

おぐらやま農場では当地標準(農協指導防除暦)の3分の1以下という基準で10年以上低農薬に取り組んでいますが、今年は4分の1以下でおさまり、それでも例年よりも病虫害の発生が少なくなりました。部分的には虫食いが出たり、先月書いた褐斑(かっぱん)病が葉に発生したりもありますが、まだ借りたばかりの畑か、原因が特定できる1部分で済んでくれました。ジュース加工にまわるりんごの割合もかなり減らすことができた年でした。

りんごの実や葉が虫に食べられたり病原菌に侵されたりの現象は、言葉を変えて言えば生命力の弱ったものが淘汰され、腐敗・分解されて次のいのちへ姿を変えていくことです。それは自然界の理であって何も理不尽なことが起こっているわけではないと思います。そして肥料がたくさん撒かれてしまったりんごや野菜たちに病気がでたり虫食いが出たりするのはその場に生えている作物たちの生命エネルギーが弱ってしまっているということに他なりません。

前述の愛知の方が人参畑で人参を引き抜いて言いました。「このバランスがいいですね。葉が小さい。人参の長さと同じくらいでいいんですよ。肥料の効いた畑だと葉が茂って茂ってしょうがないんです。葉が小ぶりだと人参も小さいように思うけれど、健全で仕事をしてくれる葉っぱは小さくても人参は十分に育ってくれる。」 そしてその人参をかじって「全く嫌な味がないですね。あちこち有機農法で作る人参を食べてきましたがこれはなかなかない味ですよ」と褒めてくれました。

そういえば近所に住んでいる友人が、生まれてまだ半年余りの赤ちゃんに離乳食でうちの人参を茹でて食べさせていたのですが、切らしてしまったのでスーパーの人参を茹でて食べさせたら吐き出してしまったそうです。「たんじゅんの野菜が美味しいとか体にいいとかって大人の頭で考えて食べている訳じゃないのにね」と笑っておりました。「人参嫌いの子ども」の原因が子どもに有るわけではなく、人参が美味しくないから嫌いになるのです。ドレッシング・調味料でそれをごまかすことはできるかもしれませんが(使っちゃいけないという意味ではありませんが) でもそれは畑の土が美味しくない事の結果です。

炭素循環の畑で育つ作物は、それまでに比べて節間が短く、葉が小さくなる傾向が顕著にみられます。トマトやピーマンがそうですし、おぐらやま農場の人参やりんごでもそうなってきています。ところが葉野菜のレタスや小松菜などでは明るい緑色の葉がどんどん大きくなり収量は明らかに増えます。そして大きくなっても(なりすぎたように見えても)筋が固くならず甘みのある美味しさが続くのです。これも不思議です。りんごの葉がどう展葉し、どう色を変化させ、そして落葉していくのかをよく見ていくとその樹が何を欲しがり、何を要らないと言っているのか、どんな気持ちでそこにあるかを感じることができます。

ちなみに「叶」という漢字に「一枚の葉」という意味があることをご存知でしたか。不覚にも僕は自分の子どもにこの漢字を使って名前を付けておきながらその意味を知ったのは4年ほど前。中国人の方が遊びに来てくれた時、子ども3人の名前を墨書して壁に貼ってあったのをみて「3人とも素敵な名前ですね。末っ子くんは農場で育つ子どもにはピッタリのいい名前ですね」とその意味を教えてくれたのです。末っ子の彼が3人の中でも一番畑が好きで野菜の世話をやりたがるのはそういうことだったのかと得心がいったのでした。彼に今年はスイカを作りたいと熱烈に頼まれ、一緒に苗を植えて成長を見守り、収穫近くなってきたときには毎日ポンポンと叩いて熟した音を確かめていました。「叶」の字は中国語でyeと発音すると「葉」の意、xieの発音で「協」の意で「力を合わせる、睦まじく打ちとけあう」の意味を持つのだそうです。(あきお)

畑が教えてくれたこと 2015年11月号 ニュースレターより

畑がおしえてくれたこと2

< 炭素循環の行く末。秋の研究会を通して。 >

もう1月半前になってしまいましたが、9月16日にたんじゅん農についての研究会を安曇野で開きました。皆様への告知が1週間前だったにも関わらず、30名の参加者がありました。

「炭素循環が廻り始める土に転換していくのは、丁度、家を建てるようなものなんだ。土は微生物の家であるし、作物の家とも言える。その家づくりを中途半端で投げ出しちゃってる人が多いんじゃないかな。基礎を打って、柱を立てて、屋根をかけて壁も内装もね、もうこれで大丈夫だというところまで作って置けば、あとはもうほとんど手をかけることはないということが分かってきた。」

松本駅近くのホテルまで迎えに行った車の中で林さん(炭素循環農のウェブサイト執筆者・ブラジル在住)がブラジルで実践している農家の様子を色々とはなしてくれました。「なのに、屋根もかけないでそこでやめてしまうから、柱も腐るし、土台も崩れちゃう。高級マンションをきちっと用意して、人が暮らすためにライフラインが必要なように、畑の土に水分も空気も微生物の種類と数、そして必要な炭素分が充分あれば、あとは空気中からもどんどんと窒素固定していくし、エネルギーが吸引されて作物を育てていく。作物の残渣があればほぼ大丈夫。炭素資材を外部からずっと入れ続けなければ炭素循環が成り立たない、というのは勘違いなんだ。どうしてみんなバラック小屋建てたぐらいで諦めたり、やった気になって満足しちゃうのかな。」と。

ブラジルで長く実践している野菜農家でそれが検証されてきて、3年間何も入れないところの畑がこれまでと同じだけ、さらに安定して収穫が出来ているのだと。炭素資材を入れ続けなければならないという観念は、私の頭にもあったと思います。日本のように森林資源も豊富で、炭素資材には困らない国はいいけれど、世界中にはそんな条件のそろわない場所も多いわけです。また、日本でも炭素資材の取合いをするような状況になったら大変だなという思いはありました。

そこまで持っていくために、初めの数年は炭素資材の投入や、土に空気を入れる為、水はけを良くする為の工夫にいろいろと手がかかっているのですが、これでいけるとなったら、炭素資材を補給しなくても、必要であるとしてもそれまで投入していた量の数分の1でよくなる。ただ、微生物たちの量と種類がしっかりと生息できる環境にするためには、かなりのエネルギー、初期投資が必要になります。今まで肥料や農薬で土を傷めてきた度合いが大きければ大きいほど、その修復にはエネルギーも時間もかかってしまうのです。

穂高で野菜をつくっているマツザワさんの畑はすでに良い循環が廻り始めているように見えます。近くにキノコ屋さんがあるので十分な廃菌床をこれまで使ってきましたが、これまではいくらかミミズが出たりして、発酵と腐敗のギリギリのあたりのように僕には見えていたのですが、今年から炭素資材としての廃菌床を入れなくしてから、さらに野菜の出来が安定し美味しくなっているのです。

おぐらやま農場の果樹園では、これまで5シーズンやり続けてきた無肥料で炭素資材の補給、そして2年前に通路に掘って作った深さ80センチの溝のある桃畑・りんご畑の様子を見てもらいました。殺虫剤・殺菌剤などを当地標準の3割以下の減農薬栽培でも、今年は一層健全な葉が茂り、収穫間近のシナノスイートが大きく玉伸びしているところをみんなに見てもらうことが出来ました。

そしてそれと対比する意味合いで、今年の春から私達が世話をすることになり、摘果・草刈などの管理作業や防除など同じように手をかけてきた畑も見てもらいました。この畑は9月初めごろから褐斑病(かっぱんびょう)の症状がいくらか出てしまい、健全な葉が茂っているとは言えない状況になっていました。(右の写真)おそらくはお盆後から9月始めまで続いた信州ではめったにない長雨の影響を受けて病気になってしまったのかと見ていました。

その場に参加していた石川県の果樹試験場で技師をやっている若林さんが、「これはきっと長雨で水が土にたくさん入ってしまったときに根の末端とかが窒息してしまったかな。」と言うのです。「水没して根が弱ったり部分的に死んでしまったりすると、それに合わせてバランスを取るように葉の方も病斑を作って働かない部分を作る。長雨の水がどれだけ降ってきてもみんな吸い込んでしまうぐらい土が団粒化して耕土が深くなっているか、水の逃げ道がしっかりできていれば、根が傷むことはないから大丈夫だ」と。たんじゅん転換5年の畑ではその環境がある程度出来ているから、同じ管理でも立派にりんごが実り、葉は頑健に展葉してくれていたのです。

褐斑病の解決法としてあってるか間違っているかはともかく、こんなことをいう人がいるんだと思いました。人間の頭で考えることが基準だと「病原菌を殺菌するための農薬はこれだ」となってしまうしそれで話が終わってしまって普通です。ところがりんごの樹を基準に見ていくと、全然違う解決法が出てくる。これが面白い所で、百姓がやるべき本当の仕事なのだと思うのです。

10月21日の若林さんが主催した石川でのたんじゅん研究会に、今度は私が車を走らせて参加させてもらいました。高く盛り上げた畝を作り、排水路を備えたイチジク畑では、無肥料無農薬栽培で立派な実がついていました。これぞ高級マンションです。加賀平野の水田地帯ですから、地下水位も高く、年間降水量が2600㎜を超える場所。普通に果樹を植えて育てるにはなかなか大変な場所だと見えるのですが、やり方次第ではここまでできる。(ちなみに長野県の年間降水量平均は900㎜台。3分の1近い値なのです) 畑に入って何を見るか、何を感じるか。果物栽培好適地の信州安曇野で、どんなりんごたちのお世話ができるでしょうか。おぐらやま農場の果樹園はまだまだこれから。どこまでいけるのか楽しみな秋になりました。

よろしくっす!!

おぐらやま農場

Author:おぐらやま農場

こんにちは、おぐらやま農場のてるちゃんです。
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桃









みんな楽しいね♪
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