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北小倉区産廃処理施設について

---今日は北小倉区ゴミ問題対策委員会事務局長の中村享嗣(たかつぐ)さんに、これまでの経緯や住民運動の原点など、多岐にわたってお話を聞かせてもらいたいと思います。------

あの施設が、我々の暮らしに対して何の影響もない、有害物質が排出されないということなら、反対するのはエゴでしょうね。だけどちょっと話が大きくなるけど、例えばどこかの国が日本にいきなり侵略してきたとしよう、そんなこと考えたくないけど。そこでもろ手を挙げて、参りました、降参ですってやるのか、それともここを護らなくちゃいけない、好き勝手は許さないって抵抗していくのかという、今、小倉の住民、安曇野市民が直面しているのは、そういう状況ではないのかなと、俺は思っている。

何度も言うけどあの施設が自然環境や我々の生活に何の影響もない、有害物質が出ないとそんなことが一切ないなら反対運動はただのエゴだと俺もそう思う。同じ敷地内に作られたM社とA社の施設(実質は同一グループの経営体。M社の社長は元A社の社員)の現状を見ると、何人の専門家にも調べてもらって分かる通り非常に大きな有害物質を排出する危険性がある。一番危険だと言われているのがA社の堆肥化施設。

長野県北信地方に建設された堆肥化施設がこの施設にとても類似した例なんだけれど、そこで何が起きたかを調べてみると、一人は下半身不随になってしまった、さらに体調を悪くした人が5人出たと。周辺の山林では樹木が突然枯れ始めた。タンパク質が腐敗したような悪臭がものすごく、それを消すために施設内で次亜塩素を使った際に有害ガスが発生したのではないかと推察されている。だけどもそうやって健康被害を訴えても、本当に施設からの有害ガスが原因なのかときちんと認めてもらえない。因果関係がはっきりしないとうやむやにされてしまっているのが現状。だから北小倉の施設が稼働してもし被害が出てしまっても簡単にそれを排出者責任とし、稼働中止をすぐに認めさせられるかどうかはまず難しいだろう。

そこでここに住んでいる自分たちがどうしなくちゃいけないか。自分たちの生活は自分たちで守るという、当たり前のことだけどそれをやらなくちゃいけない。

例えばM社の廃材チップ化施設からは粉塵飛散で、施設の周りに住んでいる人たちは夏でも窓が開けられない、洗濯物が外に干せない、自動車のフロントガラスに粉塵が積もる、など日常生活にものすごい影響が出ている。でも安曇野市の行政に掛け合っても、ほとんど手立てはしてくれない。となれば、我々は我々の力でこの地域を護らなければならないと、今はそんな状況になっている。

行政がどうしてあんなに業者の味方になっちゃうのか、これはここだけの話じゃない。日本中こんな話はどこにでもある。経済行為優先で物事を考えていく今の社会風潮は、住んでいる人の体調が悪くなろうと病気になろうと見て見ぬふりをするケースが圧倒的に多い。手だてをとったとポーズだけはするんだよ。だけど根本的な解決を見ることはまずない。

ごみ問題の根本解決をするなら北欧諸国がやっているけれど、「リサイクル」じゃなくて「リユース」を徹底してやる必要があると思う。元を辿っていくなら国の政策に問題点があるんだと思うけれども、そんなことをここで議論し始めても仕方がない。

----今目の前にあるわれらの生活、目の前の人たちを護るのが先という訳ですね。-----

だから俺たちは立ち上がって闘わざるを得ない。なんでも反対とか好戦的な性格とかそんなわけじゃないよ。でもここで黙ってるわけにはいかないんだよ。ましてやあの地域は安曇野の最上流域にある。そしてそこに産廃の中間処理施設が出来た。もしここから有害物質が排出されるとなると、これは間違いなく安曇野全体の大問題になる。地下水に流れ込んでしまえば美味しい水で有名な安曇野の水も台無し。わさび田も大変なことになる。許認可されていることがみんな始まってしまえば、周辺数キロにわたって化学物質が飛散すると専門家たちは口をそろえて言ってる。

すぐ近隣に住居や畑を持っている我々の生活を護るということと、安曇野の上流域に位置しているということからこの安曇野市全体のきれいな空気、美味しい水、豊かな自然環境を絶対に護っていくということ、そんな大きな意味があるからこそ俺たちは立ち上がらざるを得なかった。

----具体的な住民運動の形というのはどんな形になってきたのでしょうか----

裁判をおこして、我々の主張を司法の場で訴えている。行政訴訟で3つと民事訴訟で2つ。行政訴訟というのは一つが長野県に対しての訴え、もう一つが安曇野市に対しての訴えということ。産業廃棄物処理業の許認可については県が、一般廃棄物処理業は市が許認可することになっていて、この施設には両方の許可申請が業者から出ており、それぞれ県も市も許可してしまっていることについて、不備・問題がこれだけあるのになぜ行政が許可したのかという内容。それから業者のやった防音壁のかさ上げ工事がとても危険なものになってしまっていて、これについての係争が一つ。合計3つが行政訴訟。

そして民事訴訟はA社・M社2つの会社に対して、それぞれ操業禁止を訴えている裁判。そしてその裁判に対しての反訴(逆に原告が訴えられた)という形で、もう一つ裁判が増えて合計6件の裁判を同時進行で進めている状況です。

裁判をやっていく上でなんといっても大事なのは弁護士さん。この民事訴訟裁判に全国ゴミ弁連(たたかう市民と共にゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会)の会長をやっている梶山先生がついてくれた。これが私たちの住民運動にとってはものすごく大きいことだったといえる。

-----どうして梶山先生、この案件を受けてくれたんでしょうか。他にも弁護士の先生が何人か関わってくれていますがそのあたりの経緯を教えて下さい----

当時の市長からは、市のやり方に文句があるなら裁判でも起こしてみろという態度で、やれるもんならやってみろと馬鹿にされてるというかナメられている状況だった。先ず地元の2人の弁護士に相談した。一番最初の(M社を相手に一般廃棄物許認可の取り消しを安曇野市に求める裁判)時だね。そうしたら、「これは原告適格の問題で裁判にならない、つまり勝負の土俵に上がれないで終わる可能性が高いから無理じゃないか」と言わてしまった。

帰りの車中で一緒に同行してくれた片桐さん・松澤さんの3人で、「さあ弱ったなあ、どうするかいなあ」とがっくり考えこんで話し合っていた時に、「伊那の方では産廃施設問題で最高裁まで行って勝訴した事例があった。そこの事務局やっている渡辺さんと駒ケ根で運動をしている竹村さんという人がいたはず。なんとかならんか相談してみよう」と話になって、帰りの車中から渡辺さんに電話をした。

渡辺さんはこう言ってくれた。「地域でいろんな問題を手掛けてる弁護士は、医者に置き換えて言えば地方でやっている診療所の先生な訳で、いろんな分野の仕事を手掛けるのが当たり前で専門医という訳じゃない。だけどこのゴミ施設問題は裁判の中でも一番難しいと言われている分野だからやはり専門家の先生に相談した方がいいんじゃないか。例えて言うなら、心臓手術を田舎の町医者がやらないのと同じだよ」。

それで高尾山の環境を護る運動で事務局長をしている東京八王子の橋本さんに相談してみた。この方は、うちにたくさんりんごを注文してくれたり、奥さんはボランティアでりんご園の作業を手伝いにきてくれる間柄だったし、北小倉の産廃施設のことも前から分かってくれている人。その橋本さんから廃棄物問題に精通しているということで東京の樋渡先生を紹介してもらった。「地元の弁護士さんに原告適格の問題があって裁判はできないって言われているが何とかならないだろうか。」と東京の事務所へ行って樋渡先生に相談したら、「ああ、大丈夫ですよ。きっと裁判にできますよ」ってあっさり快諾してくれた。

A社はその時は、県と裁判中だった。産廃施設の事業計画の承認を田中知事時代に取り消されて、そのことに対する裁判だった。それでもし県が勝訴しても、A社の身代わりのM社が代わって操業をする可能性が高い状況もあり、それまでのM社の操業にいくつも問題点があることに対して一般廃棄物許可取り消しの裁判を起こすことが必要だということで、原告になって一緒に裁判をやっていきたいという人が240人も集まってくれた。

そして樋渡先生と、一緒になってこの問題に取り組んでくれることになった岩崎先生と、いろんな打ち合わせをしながら、裁判が始まった。原告適格の問題も、裁判でそこを論点にしたい行政(安曇野市)側が主張はしたけれど、裁判官の方はさほど問題にせずこちらの主張を受け入れて本格的な審理に入ることができた。これは樋渡先生たちのサポートが本当に大きかったと思う。

そしてA社と県の裁判の判決が「どちらにも至らない部分がある」という形になって、県が敗訴した訳じゃないけれど結局産廃の事業認可が出てしまう結果になり、住民運動としてA社に対して民事訴訟での事業停止裁判をやらなくちゃいけない事態になった。その時点で樋渡先生に、「そちらの方も弁護をお願いできますか」と聞いてみたら、しばらく考え込んでからの返事が、「もし小淵沢の梶山先生がこの問題の弁護に関わってくれたなら、A社の社長は不安で夜眠れなくなると思う」というものだった。

樋渡先生がそこで梶山先生の名前を出したのは、この問題を解決するためにはどうしても梶山先生の力が必要だと感じたんじゃないだろうか。全国ゴミ弁連の代表を務める梶山先生はまさにゴミ問題の専門弁護士。この分野では日本で一番詳しく、たくさんの事例や裁判の戦い方まで本当にたくさんの知識とアイデアがある人だから、全国から弁護以来が殺到する超多忙な先生。忙しいのは承知の上だけれど、梶山先生が弁護を受けてくれるかどうかは住民運動の熱意次第、特に梶山先生はそういう人なんだと樋渡先生が言われた。

----たしかH22年の秋に梶山先生が安曇野へ講演会に来られてますね。----

それで、まずはこの現状を視察に来てほしいとお願いして、現地視察と講演会を企画して北小倉の施設を見てもらうことができた。問題点・課題など指摘してもらったりして、これで民事訴訟の弁護を受けてくれるかなと山梨の小淵沢にある梶山先生の事務所へお願いに行ったんだよ。その時は5人ばかりで出かけていったと思う。

「実はA社への民事訴訟を検討しているんだけれど、ぜひ梶山先生にこの仕事をお願いできませんか」と。だけど梶山先生、「うーん、ちょっと待ってくれ。1週間考えさせてほしい」という返事。その時の感じで、これは断られるかなって危機感をもったんだ。やっぱり帰りの車で、「いやあ、あの空気はどうもダメそうだ。これはやばい。どうするかなあ。」と話になったんだけど、何とか我らのこの住民運動に対する情熱を伝えていくしかないだろう、メールで一人ひとりが思いを伝えようって話になった。

まず片桐さんがメールを送った。「自分は安曇野の美しい自然の写真を毎日撮っている。何としてもこの自然環境を護りたい。私の残りの人生はこの運動にすべてをかけるつもりだ」。 次に和田さんがメールを送った。「私は自分の寝所をつぶしてでもこの住民運動をやり遂げる覚悟だ。そのために梶山先生にどうしても力を貸していただきたい」。 そして俺はりんご作りのことを書いた。「中村自然農園は何十年も前から除草剤をやめて、できる限り農薬散布を減らし、環境に負荷をかけずにりんごを食べてくれる人の健康を願って農業を続けてきた。これからも三郷小倉が安全でおいしいりんごが作り続けられる土地であるために全力を尽くす」。

そして俺の送ったメールのあと、少しして梶山先生から、「なんとかやってみましょう」と返事がもらえた。正直言って片桐さんも和田さんも俺も死に物狂いでメールを書いた。何とか梶山先生に受けてもらえるように必死だったと思う。そして先生にその思いが届いた時は本当にホッとした。

それから4年が経つけれど梶山先生も、俺たちの運動の進め方も評価してくれているんじゃないかと思う。2013年の夏に、全国ゴミ弁連の総会とシンポジウムを安曇野市三郷公民館で開催することを決めてくれて、全国のゴミ問題の専門家たちに北小倉の施設を視察してもらうことができた。それは梶山先生たちが俺たちの運動を前向きに捉えてくれて応援してくれている顕れだと思っている。

そんなことで行政訴訟は樋渡先生と岩崎先生、民事訴訟は梶山先生と松本の中島先生に担当してもらって、布陣としてはこれ以上ないとも言える体制で進められているんじゃないかな。

----裁判の実際の進み具合や論点などについて、少しでもわかるようにお話いただけますか。----

まず、裁判が実際どんなふうに進んでいるかを話す前に、大前提として頭に入れておいてほしいのは、「裁判に勝つ」ということと「すべて真実を明らかにしてその結果、正義・信義のある方が勝つ」ということは全く意味合いが違うということなんだ。(笑)これはやってみなくちゃわからないことでした。

裁判に勝つための資料集め・証拠集め、新聞社やテレビ局へのマスコミ対応などで世論へどう訴えていくかなど、とにかく「裁判に勝つ為には」と一生懸命考えなくちゃならない。それから裁判長がどんな人かでもずいぶん判決結果が変わってくる。こちらで裁判官を選べるわけではないからいろいろ言っても仕方がないけれど。

粉塵被害や騒音被害について、被告側は「そんな問題は出ていない、出ていたとしても軽微なもの、許容範囲である」の1点張りで主張している。実際に住んでいる人にとってはとても許容できるなんてものじゃないけれど、これは許容範囲の数値が初めから甘く設定してあったり、24時間監視体制がないこともあってちょっと詰め切れない部分がある。

だけどもこの部分では勝てるというものもある。一つは防音と粉塵飛散防止の壁の問題。建築廃材チップ化での騒音と粉塵被害を訴えていく中で業者が壁をかさ上げして造り足したものの不備と設計図の虚偽の報告については証拠写真も有り(コンクリート強度を確保するための鉄筋が設計図通り入っておらず、地震などでコンクリート壁が崩落する恐れが高い。工事途中の鉄筋が明らかに少ない写真あり)、向こうは言い訳できない状況になっている。

この点が許認可判断の材料になってくれればと思うが、行政側はなんと「壁については許認可の範囲ではない」と主張している。つまり家の周りに作った生垣のようなものなんだから施設と関係ないでしょと。普通に聞いたらすごい言い逃れにしか聞こえないよね。こちらの主張は「あの壁はただの壁ではない。粉塵飛散の防止、騒音の防止を目的に造り直された、れっきとした施設の一部である。施設に不備と虚偽があるのだから認可してはいけない」と。

そしてもう一つの争点は搬入道路の問題。あの施設には搬入道路がないんだよね。そんな不備な施設に許可を与えられますかという話。それで実際どうしているかというと施設東側の鳴沢川の堤防道路を使って建築廃材の搬入・搬出をしている。その道路はもちろん業者のものではないし、立札には「一般車通行禁止」と安曇野市の名前入りで表示してある。ガードレールなんかもついてないから川に落ちたら危険。実際に業者がトラックを川の中へ横転させる事故を起こしている。

そんな一般車通行禁止のところを堂々と大型トラックやトレーラーが日常的に使っているのに何故市は何も言わないのか。裁判の中で市はこう言った。「それは自由使用の範疇です」。 もう訳が分からなくて頭がおかしくなりそう。(笑) 不備のある施設に操業許可を与えてしまった自分のミスをどう正当化するのに必死に答弁しているようにしか聞こえないんだが、裁判官がどう判断してくるかはこれからの審理にかかってくる。

粉塵も出す、騒音もひどい、造り足した壁は嘘の図面で許可を取っていて、いつ崩れるかわからない、搬入・搬出道路が一般車通行禁止のところしかないと、これで許可できる施設と言えますかという主張が通らない訳ないと俺は思うんだけれど。

今まで説明したのは主にM社施設の建築廃材チップ化施設のこと。それよりさらに大きな危険があるのがA社の堆肥化施設という話はしたよね。でも実際今は堆肥化施設は動いてない。なぜか? その質問に答える形で、マスコミ記者にA社がコメントしている。「もし何かあったら困る」。つまりまだ裁判係争中で、その途中で悪臭だとか有害ガスだとか何か出てしまったら裁判に悪影響が出て負けてしまうから今は稼働できない、動かせないと。

何億円もかけて造ったんだろうから自信があるなら裁判中だろうがなんだろうがやればいいじゃないかと思うけど、それが出来ない程度のものなんだよね。「動かすといろんな問題が出てしまうことは社長も分かっているし、裁判中はダメだけど終わったら動かしますよ」という意思表示と俺は見ている。

今やっているのは堆肥化施設の横でダンボールとか新聞紙を圧縮梱包したり、廃プラスチックも破砕しないで袋をつめかえたりしてるだけなので化学物質の飛散とかはない状況。こちらはいろんな値を計測できる機械も購入して計ってるんだけど今のところ大丈夫。この調子でずっと行ってくれればいい。ただあれだけの規模で何億円もかけて造った堆肥化施設をずっと遊ばしておくのは向こうの経営問題としては大きいと思う。一番利益が出るのも堆肥化施設だろうと言われている。でも業者は自制せざるを得ない。これは住民運動と裁判でこの施設の問題を訴え続けている一つの成果と言えると思う。

----そのことはこれまでこの住民運動に関わってくれている人たち、カンパに協力いただいた方にもしっかり説明しておかないといけないところですね。----

住民運動のことで言うと、弁護士費用やさっき言った計測の機械や他にもこまごまとかかる経費は全てカンパ金でやっていかなくちゃいけない。北小倉区には190軒ぐらい家があるんだけれど、問題の起こったH16年から対策委員会を作って活動費として一年に5千円、裁判を始めたH21年からは毎年1万2千円のカンパ金をお願いしてるんだけれど、ほぼ8割以上の家が出してくれている。支持しているけど経済的な理由でどうしても出せないという人もいるから、実際は9割以上の人が支持してくれている。北小倉区のカンパだけでは全然足りないので近隣区や市内・県内・県外の人にもカンパをお願いして、どうにかやりくりしているのが現状だけれど。

あちこちの住民運動の様子を見ると、10年間続けてある程度の負担金も被りながら支持者が9割いるというのはすごいことだとこれまで各地で運動してきた人や専門家が言っている。ゴミ問題対策委員会を立ち上げたころは区長経験者に呼ばれて、「おい、お前たちがそうやって問題だ問題だって大騒ぎするから区の中がぐちゃぐちゃになっちゃうぞ。まずはやらせてみて問題が起こったら注意したらいいじゃないか」ってずいぶん言われた。

でも調べれば調べるほど被害が出てからでは遅いということがよく分ったから、絶対に被害の出る前に稼働阻止することを目的にやってきたし、そういう気持ちで力を合わせてやってくれる人が大勢いたのが大きかったと思う。だって足尾銅山の鉱毒でも水俣の有機水銀でも、被害が出てから正式に認定されるまで数十年かかってる。今回の原発事故でも東京電力が出した放射能で甲状腺ガンの人が増えたりすることがあったとしても、その因果関係を簡単に認めてくれるかと言えばそうはならない。そんなことを考えてみても、被害が出る前に危険性があるものはなんとかするっていうのは絶対譲れないところだったと思う。

行政関係や議員の中にも結構いろんなウワサを立てられたな。言葉は悪いけれど安曇野市の番犬、長野県の番犬のような議員さんからは、「一部の人間が北小倉を牛耳って過激な住民運動をしている」とかなんとか・・。そういう見方・レッテルに当てはめようとあちこち吹聴されていく感じが多々あった。

だからこの前の市議選で住民の声を議会に届けてもらえるように、誰か立候補してもらいたくって、この人はと思う人に頼んで回ったんだよ。だけど北小倉で5人回ってみんな断られちまって。最後は望くん(安曇野地球宿の増田望三郎さん)がやるって言ってくれたからよかった。彼が市議に立ってくれて、一番よかったと思うね。あれだけ自分からどんどん動けるとは思ってなかったもの(笑)。 

----先ほど言われてた地元の結束というか、当初は組織の切り崩しの為に「反対運動をすると北小倉区に20億円の賠償金が来るぞ」とかとんでもない情報が流れて、住民運動グループを分断しようという圧力が結構あった訳ですが、それが10年以上継続して一枚岩でやってこれたポイントはどんなところでしょうか?---

それはやっぱり学習していくということに尽きると思う。正しい知識や情報をみんなで共有して学習して理解していくということが何より大きな力になったと思う。それからこういう地域だから隣近所の人間関係が濃いでしょ。俺も若いころはそういう濃密な人間関係が嫌で嫌で仕方がなかった。実は青年団にも消防団にも入らずに、松本に住んでホテル勤めをして、あんまりこの辺りにウロウロしてたくなかったんだ(笑) でもね、りんご畑を継いで小倉に戻ってきて、この問題が10年前に起こってからつくづく身に染みて感じるのは、自分たちの地域を自分たちで守っていくなら、隣近所の付き合いは絶対密にしていかなくちゃいけない。北小倉だったら元旦の朝に御柱(おんばしら)を立てる行事に皆が総出で出てきたり、鎮守山に桜が咲いたらみんなで花見会をしたり、昔から続けてきた伝統とかも大切にしていった方がいい。近隣の人との付き合いを大切にする、濃くするってことが実はその地域を皆で守っていくということにものすごく直結していくんだってことにようやく気付くことができたかな。だから皆さん、自治会には入って下さいね。(笑)

----地域を自分たちで守っていくには、近隣のお付き合いが何より大切だと。なるほど大切な視点だと思います。-----

そう思うよ。自治力とでもいうか。それが薄くなってるところほど隙を見せたらすぐに付け込まれる。行政がちゃんと考えてるだろうからなんて人任せにしてたら大変なことになってしまうのは目に見えてるからね。

----今日はたくさん話を聞かせていただき、ありがとうございました。弁護士さんを誰に頼めばよいかというところの話でも、中村さんの取り組んできたりんご作りに共感してくれている人からのつながりでいい先生と巡り合っていたりと、同じりんご農家の僕としては、大先輩の話から多くのことを学んだように思います。感謝いたします。-----

(文責 おぐらやま農場  松村暁生)




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