4月1日 畑が教えてくれたこと 2013年3月

【おぐらやま農場ニュースレター3月号より】
< 里親農業者になる >
長野県には新規就農を希望する人たちの研修先として、「里親農業者」を就農希望者に紹介し、実地に里親農業者の元で1年~2年程度の研修を受け、農業技術や営農するためのノウハウを学ぶ制度があります。
水稲・野菜・果樹・花・畜産・きのこ等、様々な分野の里親農業者が県内に合計200人以上登録されていますから、県内で栽培されている品目ほぼ全てに対して、その技術・経営を教えてくれる場所があるということです。
この春から、訳あって私も長野県里親農業者の登録をさせていただくこととなりました。その訳とは、1月からウーフで農場に滞在しているコウタロウ君が、このあたりでの新規就農を希望しており、主な品目として加工トマトを考えているとのことで、しばらくここで実地に研修したいとの申し出を受けたからです。
私たちが新規就農した12年前にはまだ「里親研修制度」はなかったのですが、幸運な巡り合わせで出会うことができた地元農家のミサワさん・オオクラさんに、りんごや桃の栽培を教わり、ことあるごとに相談に乗ってもらい、農地や住宅を見つけてもらったり、機械を使わせてもらったりと、本当にお世話になり続け、どうにか12年間やってこられた訳です。
そんな自分の所へ、今度は「農業がしたいのでここで研修をさせて下さい」という若い人が訪ねてきた。正直いって、武者ブルイするような感覚がありました。ここで彼のお役に立つことこそが、僕がこれまで受けてきたものをお返しできる唯一のチャンス。そう思いました。
どうしてか。ミサワさんやオオクラさんにどんな形でこれまでの恩をお返しできるかって、直接的にできることなんてほとんど無いわけです。お二人共もう何十年も真っ当な農産物を栽培して、着実に営農していますから。もちろん声をかけてもらえることがあったら、喜んでお手伝いに行きますが、私たちが受けた恩はそんなことぐらいで返せるものではないのです。
ウーフホストを始めて8年ですが、本腰を入れて「ここで就農したい」という希望を伝えられたのは彼が2人目。(昨年も一人おられたのですが諸事情あり本人が断念)。 続けてそのような方が来られるということはようやくそう言う希望を受け止める素地が自分たちに備わって来たのかもしれません。
「加工トマトを炭素循環農法で作ってみたい」とか「自分の手で農産物を販売したい」とか「妻と話し合うなかで、信州安曇野の辺りが一番いいのではと考えている」とかの希望を聞くうち、どうみてもこれは自分の仕事だと強く自覚したわけであります。
ともかく、冬のうちからトマトの畑作りが始まり、種まき・育苗・定植・管理作業・夏の収穫・そしてトマト製品の加工、その販売等々、彼に一通り体験してもらわなくてはならないことが山積みです。
今年は研修の年としても、来年からは営農を始める算段ですから、今のうちに圃場の準備や農業機械の確保、しばらくはおぐらやまで生活するにしても、住宅も考えていかなくては行けません。
さらに加工トマトだけで営農できるほどこの業界は簡単ではありませんから、一人前の農業経営ができるよう彼自身のスタイルを確立していくためにまだまだアイデアを出し、試していかねばなりません。実際にそうなるまで責任を持って一緒に練り上げていくのが、里親農業者の役割です。
簡単な仕事ではありませんが、彼とその家族がこの地に根付いて農業をやりがいのある仕事にして定着できるよう、私たちに何ができるでしょうか。楽しみになってきました。